乾癬
乾癬
乾癬(かんせん)は、皮膚に赤く盛り上がった発疹(紅斑)と、その上に付着する銀白色のかさぶたのような鱗屑(りんせつ)を特徴とする慢性炎症性疾患です。かゆみを伴うことも多く、発疹は頭皮、ひじ、ひざ、腰など、衣服とこすれる部位にできやすい傾向があります。言葉の響きから誤解が多いのですが、乾癬は移る疾患ではありません。
また、皮膚症状だけでなく、関節炎、爪の変形、メタボリックシンドロームとの関連も指摘され、全身疾患の一つと捉えられています。
乾癬には以下のような複数のタイプがありますが、多くは尋常性乾癬と呼ばれるものです。
尋常性乾癬
軽度に盛りあがり、銀白色のかさぶた(鱗屑)を伴った境界明瞭な赤い面が、関節部や腰臀部などに生じます。最も一般的な病型です。
滴状乾癬
1cmほどまでの小さな乾癬の皮疹が見られます。比較的急性の経過で生じ、数ヶ月で消えていくことが多いです。
乾癬性関節炎
乾癬に関節炎を伴うものです。乾癬患者様の15〜30%程度に関節炎の症状があるとされています。また、爪または頭部に皮疹がある場合、関節炎を合併しやすいとされています。
乾癬性紅皮症
乾癬の皮疹が全身に出現し紅皮症と呼ばれる状態となるものです。尋常性乾癬や膿疱性乾癬からの移行が多く、中には脱水や低タンパク血症など全身の問題をきたす場合もあります。
膿疱性乾癬
乾癬の皮疹に小さな破れやすい膿疱を伴う病型です。発熱などを伴い全身に症状を認める場合は汎発型膿疱性乾癬と呼ばれます。
乾癬の発症には、遺伝的素因と環境要因が複雑に関与しています。明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与すると考えられています。
遺伝的素因
乾癬には遺伝的な背景が関与しているとされており、親や兄弟など近親者に乾癬患者がいる場合、発症リスクが高まることが多くの研究で示されています。特定のHLA(ヒト白血球抗原)遺伝子が関係していることがわかっており、これにより免疫系の反応性が変化し、炎症が起きやすくなると考えられています。ただし、遺伝的素因があっても必ずしも発症するわけではなく、環境要因が重なることで発症に至るとされています。
免疫異常
乾癬の背景には、自分自身に対して過剰に反応してしまう自己免疫的な炎症反応があり、複雑な免疫反応を生じています。乾癬の皮膚では、炎症を起こす細胞が集まり種々の炎症を起こす物質を出しているため、毛細血管が拡張し、皮膚が赤みを帯びた状態になります。また皮膚の細胞が、正常な皮膚と比べて10倍以上の速度で生まれ変わり、増殖が過剰な状態になっています。過剰に増殖した細胞により、皮膚は厚く積み上がって盛り上がり、最終的には鱗屑となってはがれ落ちていきます。この免疫異常には、インターロイキン17(IL-17)やインターロイキン23(IL-23)といったサイトカイン(免疫活性物質)が深く関与しており、これらを標的とする新しい治療薬も使われています。
外的刺激
物理的刺激(ケガ、日焼け、感染症、薬剤など)がきっかけとなることがあります。
生活習慣
ストレス、喫煙、肥満、アルコールの過剰摂取などが悪化因子となります。
薬剤
一部の降圧薬や抗うつ薬、β遮断薬などが発症・悪化に関与することがあります。
乾癬の皮膚症状は比較的特徴的で、主に赤く盛り上がった発疹(紅斑)に、銀白色のフケのような皮膚(鱗屑)が重なって現れるのが特徴です。これらの病変は円形または楕円形を呈し、はっきりとした境界をもって出現します。発疹の表面は乾燥し、ざらついた感触があり、無理に剥がすと点状の出血を認めることもあります(アウスピッツ現象)。
頭皮やひじ、ひざ、腰など、衣服の摩擦を受けやすい部位に好発し、かゆみを伴うこともありますが、かゆみの有無や程度には個人差があります。また、乾癬は慢性疾患であるため、症状は良くなったり悪化したりを繰り返しながら長期間にわたって続く傾向があります。爪の変形や関節の腫れ・痛み(乾癬性関節炎)を伴うこともあり、全身的な影響がみられるケースも少なくありません。
これらの症状に心当たりがある場合は、乾癬の可能性も考えられます。一度、皮膚科での診察を受けることをおすすめします。
乾癬の診断は、医師による視診と問診が基本です。皮膚の症状の分布や形状、経過などから総合的に判断されます。必要に応じて、皮膚の一部を採取して顕微鏡で観察する「皮膚生検」が行われることもあります。
また、関節症状がある場合は画像検査が必要になります。血液検査では特異的なマーカーはありませんが、炎症の程度や他の自己免疫疾患との鑑別のために行われることがあります。
乾癬は慢性疾患であり、完治させる治療法はありませんが、症状をコントロールして再発を防ぐことが可能です。治療は症状の重症度や生活への影響度に応じて段階的に選択されます。
中等症〜重症の患者に対して、インターロイキン(IL)やTNF-αなどの炎症性サイトカインを標的とした注射薬。
乾癬は慢性に経過する疾患であり、継続的な通院、治療が必要です。また患者様が日常生活でストレスを感じやすい面もあります。しかし、治療法の選択肢は以前より広がっており、症状のコントロールが可能です。
まずは、皮膚科で正確な診断を受け、状態に合った治療を継続することが大切です。日常生活では、ストレスや睡眠不足を避け、規則正しい生活を心がけることも症状安定の助けになります。
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